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笛が鳴ってすぐにPKを蹴ったら失敗する? 心理学的に見たキッカーの“回避戦略”

text by ベン・リトルトン photo by Getty Images

蹴り急いでしまうイングランドの選手たち

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【図2】代表チーム別反応スピード

 図2は、主審が笛を吹いてから蹴るまでの時間を代表チーム別に比較したものだ。

 この数字を見れば一見たいした差はないように思えるだろう。だがウサイン・ボルトの反応スピードが0.17秒であるのを考えると、イングランド代表選手の平均的反応時間がわずかに0.28秒でほかの代表チームと比較しても非常に速いのがわかる。

 ジェイミー・キャラガーがポルトガルとのPK戦で早く蹴り過ぎて蹴り直しを命じられたのもうなずけるというものだ(彼は2回目も大急ぎで蹴った)。

 1996年にはガレス・サウスゲートはペナルティスポットの方に歩いていくときに主審が前の選手のPKが決まったことを知らせる笛を吹いたのを聞き、それを蹴って良い合図と勘違いしていきなりそこから助走を始めた。自著『ウッディ・アンド・ノード』で彼はそのときのことをこう告白している。

「私はとにかくボールに触りたかった。ボールをスポットに置いて、蹴って、けりをつけてしまいたかった」

 クリス・ワドルは1990年にPK失敗について同じようなことを言っている。

「私の頭にあったのは、さっさと終わらせたいということだけだった」

 スティーヴン・ジェラードは2006年ワールドカップでリカルドと対決したとき、もっとあわてていた。自著『ジェラード、俺の自伝』でこう打ち明けている。

「俺はもう準備ができていた。(主審のオラシオ)エリソンドは手間取っていた。早くホイッスルを吹けよ! さっさとやれよ、主審! なぜこんなに待たせるんだよ?

 俺はスポットにボールを置いた。リカルドはゴールラインに立っている。なんでホイッスルが鳴るまで待たなきゃいけないんだ?

 その数秒感が俺にとっては永遠に思えて、やる気を奪われた。主審は俺がいらいらしているのがわかってるのか? クソ! 心の中で俺は悲鳴を上げていた。

 練習のときにはあんなに簡単だったのに。ボールを置いて、後ろに下がって、助走をとって、ゴールする。練習では待つことはなかったし、緊張もなかった。

 本番は違う。エリソンドでは話が違う。あいつは何もかも遅らそうとする。やっとこさあいつがホイッスルを吹いた。でもそのときには俺の集中は切れてしまっていた。ボールを蹴った瞬間、自分が狙っていた方向に行かないことがわかった。

 45センチほどずれたために、リカルドが余裕で届くコースになった。やつはセーブした。悪夢だ」

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