指揮官が本田に示したリスペクト
フィオレンティーナを2-0で破ったミラン。試合後、ファンに挨拶をしようとゴール裏へ向かおうとするミランの選手たちの間に、シニシャ・ミハイロビッチ監督が加わる。そして同監督は、試合に出た一人一人と固く抱擁を交わした。「ハードワークと注意力という点で、選手たちは素晴らしいプレーをしてくれた」と健闘に感謝した。
そして、がっちりと抱擁を交わした選手の中には、本田圭佑もいた。例の昨年10月の発言で批判の対象となり、監督の心象も悪くし構想外となったと言わんばかりの勢いで地元メディアに書き立てられていたが、プロとしての姿勢をピッチで示せばちゃんとリスペクトが生まれるということだ。
「個人の選手を取り上げて語るのは好きではないが、彼は信頼できる選手だ。イタリア語の問題で説明にはちょっと時間は掛かるが、一旦意味を理解したら指示したことを必ずやってくれる。信頼のおける兵士だ」
試合後、ミハイロビッチ監督は本田についてこのように評価した。言うことを聞く一兵卒、という表現は、意地悪く解釈すれば『指示に従うだけの便利屋』と見ることもできる。この試合も、ノーゴールは継続中。本来攻撃で結果を残すべきプレーヤーを守備で讃えても、という批判をすることも可能だろう。
だが、この日本田が見せたハードワークは、単に監督の言うことに従ったということ以上に戦略上の大きな意味があった。「戦術面ではミランに移籍してから一番いいプレーを展開したんじゃないか?」と話しかけてきた地元記者もいたが、実際それは誇張ではないように思えた。