同学年の永木が見せた主将像
キャプテンを務めることで、さらに強くなる責任感やベルマーレへの愛が触媒となってプレーのレベルを引きあげる。熟慮を重ねた年末年始で、曹監督のエールを感じたのか。
正月三が日が明けて間もないころ。練習グラウンドである平塚馬入ふれあい公園で自主トレを積んでいた高山は、視察に訪れた曹監督と偶然にも対面する。
「どうなんだ」
保留になっているキャプテン就任の件で声をかけてきた指揮官に対して、高山は「引き受けさせてください」と言葉を返した。キーワードはやはり「成長」だった。
「自分のためにもなると思ったし、自分らしくやれればチームのためにもなる。プロになって6年目だし、その意味ではキャプテンを務めてもいいのかなと。自分がキャプテンを務めることによって、普段から集中してやれるというか。もちろん去年から集中してプレーしていましたけど、そういう環境でやればさらにレベルアップできるはずだし、そういう姿勢をやはりみんな見ていると思うので、自然とチームの集中力というのも増してくると思う」
目指すキャプテン像を聞くと、苦笑いしながら「よくわからない」と言葉を返してくる。それでも、理想としてきた、頼りになる眩しい背中はいまも鮮明に脳裏に刻まれている。
「(永木)亮太はプロ3年目でキャプテンに就任して、ホントに成長していったから」
狭き門だったセレクションを突破し、川崎フロンターレのジュニアユースで永木と初めて顔を合わせたのが中学1年生の春。指導者人生の第一歩を踏み出したばかりの曹監督による、ピッチ内外における厳しい指導で鍛えられた日々。3年生になってキャプテンに指名されたのは高山だった。
「ユースでも、3年生になったときオレがキャプテンだったんですよ。全然らしくなかったけど」
ともにトップチームへの昇格がかなわず、高山は専修大学へ、永木は中央大学で別々の道を歩む。2011年シーズンにベルマーレで邂逅を果たしてから3シーズン目。永木のキャプテン拝命は彼のサッカー人生で初めての一大事であり、いまもクラブ関係者をして「サプライズ以外の何物でもなかった」と言わしめる。
高山も驚きを隠せなかった一人だったが、時間の経過ともに曹監督の慧眼ぶりに感服させられる。日本代表を率いるヴァイッド・ハリルホジッチ監督が多用してきたことで、いまでこそ浸透しつつある「デュエル」を黙々と実践していたのが永木だった。
「亮太は相手を潰せるし、アイツの背中を見て、オレを含めたみんなもついていこうと思った」