即答できなかった主将就任の要請
選手たちに生じた些細な変化や、心のなかで考えていることを瞬時かつ的確に見抜いてきたからか。湘南ベルマーレを率いる曹貴裁(チョウ・キジェ)監督が「占い師」、あるいは「透視能力の持ち主」なるあだ名をつけられて久しい。
5シーズン目の指揮を執ることが決まり、新チーム作りに着手した直後のこと。鹿島アントラーズへ移籍したMF永木亮太の後任となるキャプテンを、FW高山薫に決めたときもその心理を把握していた。
「自分がやらないと、と思っていたんじゃないですかね。実際にやるか、やらないかは別にして」
果たして、2011年シーズンに専修大学から加入して、柏レイソルでプレーした2014年を経て再びベルマーレでプレーするキャリアを描いてきた高山は、苦笑いしながら本音を明かす。
「もしかしたら、というのは若干…若干ですけどありました」
つかの間のオフを満喫し、新たな戦いへ向けて鋭気を養っていた昨年末。高山のスマホにおもむろに着信が入った。発信者は曹監督。新キャプテンへの就任を要請された。
もっとも、心の片隅に「覚悟」の二文字を忍ばせていたはずの高山は、即答を避けている。年末年始を考える時間に充てたいと電話越しにチョウ監督に願い出て、了承された。
「やはりチームなので、自分がキャプテンをすることで、チームがポジティブになると思えるのならばいいんですけど。もともとキャプテンシーがあるタイプではないし、実際にキャプテンになるという雰囲気もなかった。
湘南に入って1年目のときなんて、誰もオレが後にキャプテンになるなんて思ってもいなかったはずですよ。なので、いきなり言われても『オレはできる』なんて思えるはずもなかったし、その意味でちょっと考えたかったというのはあります」