PSGを“脱フランス化”させないチーム作り
近頃ではアル・ケライフィ会長のことを悪く言う人はほとんどいない。
その理由として考えられるのは、彼が非常に頭の切れる人物であることだ。当初は彼を、肩書きだけの『お飾り会長』と見る人がほとんどだった。実権はカタールのお偉方が握っていると。
それはある程度は事実だろうが、日常的な実務の面においても彼がスマートな切れ者だということは、一度話をすればすぐに相手に伝わる。フランス代表の国内組でナンバー1プレーヤーであるマテュイディやブラン監督を抱えることで、完全な外国人クラブ化をさせないなど、ストラテジーも巧みだ。
着任して2年目あたりからは会見もフランス語でこなしている。
もう一点はコミュニケ―ション能力の高さ。
知的なジョークを交える話術、選手たち一人一人と向き合う姿勢、メディアへの真摯な対応。イブラのような我が道をいくタイプでさえ、しっかり自分の味方につけている。いまのサッカー界を牛耳る代理人のメンデス氏とも「お友達」の間柄だ。他クラブの会長にはないフレッシュさを売りにする反面、相手をひれ伏させる威圧感もある。知らず知らずのうちに人をシンパにさせてしまう、不思議なカリスマのある人物だ。
会長には、3度ほどインタビューさせてもらう機会があった。
「笑顔だが目は笑っていない人」と、第一印象は正直あまり良くなかったのだが、その後、何度も顔を合わせたり、周りの声を聞いているうちに、印象はどんどん変わっていった。彼が協力してくれたおかげで、地元メディアでさえ不可能だったデイビッド・ベッカムの単独インタビューも実現できたので、個人的にも感謝している。
プロリーグ協会や他クラブの会長たちともうまくつきあい、リーグ1ではありえない規模の銀河系クラブを擁していながら妬みやひがみも最小限に抑えている。彼はなかなかのビジネスマンであり、リーダーシップにあふれた御仁だ。