選手たちに求められる応用性
そうした意識改革を持ってしても、イラン、韓国、オーストラリアなど強豪がひしめくアジア最終予選で“デュエル”を日本の強みにできるわけではない。
確かに球際や1対1で負けないことはサッカーの基本だが、そこで相手を圧倒できるわけではない以上、日本が伝統的に持つ強みを発揮できなければ相手から主導権を奪い、勝利の可能性を高めることは難しい。
その意味で1つヒントになるのは11月のカンボジア戦だ。山口蛍と遠藤航のボランチ・コンビでスタートした日本代表はカンボジアの守備をなかなか崩せず、前半は無得点に終わってしまった。
後半のスタートから投入された柏木陽介は「相手が思ったより引いてきていない」という状況を見抜き、その背後にボールを入れて岡崎慎司やその後に投入された本田圭佑をDFの背後に走らせ、一気に流れを変えた。
ハリルホジッチ監督が方向性を授ける中で、実行していくのは選手だ。1タッチをベースとするビルドアップ、崩しの方向性を共有しながら、時にドリブルを織り交ぜ、サイドチェンジで攻撃に幅を持たせるなど、アレンジを加えることは規制されていない。ベースを引き上げていくことは大事だが、それは試合で監督の教えをそのまま実践することとは違う。
技能における師弟関係を“守破離”という言葉で表すが、現在のチームは守と破の中間点だろう。本田圭佑は「たぶん監督にはまだ引き出しがあると思いますが、自分たちが今まで言われたことも十分にはできていない」と語る。それはイラン戦で厳しい環境ながら、簡単なミスが増えてしまったことも1つだろう。
そうしたベースをさらに高めながら、その先にどういった応用性を加えていくのか。それはハリルホジッチ監督の引き出しであるかもしれないし、選手が気付いて実行するものであるかもしれない。チームの真価は9月から始まる最終予選で問われてくるが、3月には二次予選の残り2試合が待っている。