豪州を揺るがした騒動
Aリーグだけに留まらず豪州サッカー界全体を揺るがせた騒動(試合への入場禁止処分を受けたサポーターの実名が顔写真とともに大手新聞に掲載された問題)が、ようやく収拾の方向に向かっている。
12月3週目、Aリーグ第11節が行われたスタジアムにはコアサポーター達のいつもの応援風景が戻ってきた。
豪州サッカー連盟(FFA)のスティーブン・ローイ会長の会見を受け、サポーターが“ボイコット”という実力行使の振り上げた拳を下ろしたことで、事態は大きく動いた。空っぽのサポーター席、攻撃的な言辞が並ぶ横断幕などもスタジアムから消えた。これで、少なくとも試合環境はあるべき姿に戻った。
ただ、問題の全てが解決したわけではない。あくまでも、FFAが今回の騒動の火種となったサポーターの入場禁止などの厳罰処分の見直しを示唆したまでで、それ以上は何も進んでいない。
逆に言えば、再び何か事が起これば、たちどころに事態が旧に復する可能性は充分に残されている。それだけに、FFA、そしてAリーグはこの正常化の流れが確実なものとなるよう最大限の努力を払う必要がある。
この国に本当の意味でサッカーを根付かせるために必要なのは、競技の運営サイドとサポーターとの対立の図式ではないことは明白だ。FFAは、そこを今回の騒動の経験からきちんと学び、今後に生かしていかなければならないのだが、意外にも早くその実践を彼らに求める機会がやってきたのには驚かされた。
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