「試合に出たい」から「澤さんの隣で」に
プロになって1年目の昨季は「試合に出たい」という気持ちが強くても、なかなか思うように出番を得られなかった。だが今季はコンバートを経験し、その思いが「澤さんの隣でプレーしたい」に自然と変化していったという。
練習でも必死に努力を積み重ねた。「チームで一番走って体を張っているのは澤さんだと思いますし、自分もそういう選手になりたいと強く思って、練習の段階から澤さんのプレーを見よう見まねで全部吸収してもっとうまくなるんだ、という気持ちでやっていました。それで少しずつ試合でボールを奪う回数も増えてきましたし、いい1年になったと思います」と、澤の背中を追いかけた1年を振り返る。
1995年生まれの伊藤にとって数年前まで澤は憧れでしかなかった。物心がついた頃にはすでに女子サッカー界のスターで、日本代表の中心選手。テレビの向こうにいるだけの遠い存在だ。しかし、今はもう違う。一緒に練習して、一緒に試合に出て、一緒に喜んで、一緒に悔しがる。いつしかチームメイトとしていて当たり前の大きな存在になっていた。
「一番憧れの選手であって、尊敬できる選手で、テレビで見ていた澤さんとこうやって大舞台でたくさんのお客さんの前でプレーできたというのは自分のサッカー人生の中ですごく幸せなことでしたし、いい経験になった」
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