澤穂希が現役ラストマッチ【写真:Getty Images】
2015年12月27日、ついにこの日がやってきてしまった。今年度の女子サッカーを締めくくる皇后杯決勝、そして日本サッカー界のスーパーレジェンド澤穂希にとって現役最後の試合が等々力陸上競技場で行われる。
去る23日に行われた準決勝ベガルタ仙台レディース戦に勝利した後、澤は現役ラストマッチに向けて「ちょっと寂しいかなという気もしますし、まだやれそうな気もしますけど、このメンバーで、最高の仲間と終わりたいなと思っている。最後、トロフィーを掲げているところをイメージしながら戦いたい」と決勝に向けた強い思いを語った。
中3日での厳しい試合になるが、「あと残り1試合と思えば最大の力が出せる」と、タイトルの懸かる大一番で最後のパワーを振り絞る。
チームメイトで長くINAC神戸で時間を共有してきた川澄奈穂美も「みんなが大好きな澤さん、日本の女子サッカー界、世界で活躍して引っ張ってくださった澤さんを最高の形で送り出したいって強く想う気持ちはチームメイトとして当たり前に出てくると思うので、それを良い方向にチームとして持っていければ」と、高まる気持ちを表現する。
仙台L戦でも「澤さんのために」という強い気持ちが選手達のプレーの端々から感じられた。現役引退発表後からラスト3試合、絶対に一つも落とすことなくトロフィーを掲げると強く心に誓っている。川澄は「(澤さんの背中は)大きすぎて絶対に追いつけないこともわかっていますし、それでもどんな時でも仲間を大切に思ってくれた選手。最後に一緒に喜べるよう頑張りたい」と偉大な大先輩への最大限のサポートを約束した。
最後の試合に臨む澤は「本当に最後の最後にとっておいたかというくらい溜めているので、結婚してからも点を獲れていないですし、最後そういう形で勝って終われたら」と自らゴールを決めて優勝を狙っている。
どんな時もここぞのタイミングで大事なゴールを決めて観るものを沸かせてきた”千両役者”が、その足で、頭で、身体で、最後にどんな美しい得点シーンを見せてくれるかにも注目だ。
そしてINAC神戸を迎え撃つアルビレックス新潟レディースも悲願の皇后杯優勝目指し、準備に余念がない。これまで2011年、2013年と1年おきに決勝進出を果たすも、優勝トロフィーが遠かった。今回もそれが手に届くところまで来ている。
だが、川崎のスタジアムの雰囲気は完全アウェイかもしれない。観客は澤のラストマッチを一目見ようとやってくるため、新潟が優勝すれば完全に”ヒール”だ。それでもキャプテンの上尾野辺めぐみは意に介さない。
今季は3度対戦して1勝2敗。直近のエキサイティングシリーズ上位リーグでのマッチアップでは勝利を挙げているが、「澤さんが辞めてしまうということもあると思いますし、(INAC神戸は)チーム全員が気持ちを高めて戦っているなというのを見ていて感じた。自分たちはそれ以上のものを出さないと絶対に勝てないと思う」と目の前のビッグマッチに気を引き締める。
そして「新潟は空気読まないのが得意なので、そういうところを見せられたら」と不敵な笑みを浮かべてタイトル獲得へ自信をのぞかせた。
現役生活24年の集大成で澤が有終の美を飾るか、新潟がチーム一丸の勝利でトロフィーを掴むか、運命の一戦は14時キックオフ予定だ。
【了】