限界が見えたミランのウイング主体のスタイル
そして本田は、前線での危険性も発揮していった。密集地をワンツーで破り、ゴールまであと僅かに迫った後半4分のシュートは実におしかった。しかし、本田はめげることなく次にゴール前で進んだプレーで同点弾を演出した。
カルロス・バッカが左サイドから持ち込みクロスを放つがクリアされる。すると前に詰めていた本田は、相手DFのクリアを拾うやいなや、ワンタッチで右のオープンスペースへ流した。するとそこにはアバーテがフリーで走り込んでおり、アバーテはこれを落ち着いてゴールへと流し込んだ。サイドで走り込んだ味方が実によく見えていた。
4点目についても、ボールを拾ったのちに次の展開が広げやすいところにいた前方のアンドレア・ベルトラッチの足元に正確なパスを付け、文字通り展開の起点となっていた。
この時、得点を決めたジャコモ・ボナベントゥーラは、アシストをしたアンドレア・ポーリの横に寄り喜びの輪を作っていた。一方その一つ前でパスを出していたベルトラッチはすこしその流れから遅れていたが、これに本田が寄って行って、好判断をしたベルトラッチと互いを称え合っていた。次の展開を考えてパスを回す重要性を選手同士が意識していたことと、チームへの貢献心の表れといえそうだ。
さて問題は、こういうプレーをミハイロビッチ監督がどう判断したのかということ。ゴール前では物足りないという小言があるのかと思いきや、記者会見ではわりとシンプルに評価していた。
「彼についてはこのように言う。今日のようにプレーできればいつでも試合に出ることになる。そうでない時は試合に出ない」
戦術がウイングの突破主体になり、本田には噛み合いにくくなる展開になるばかりだった。それを見て「ミランにい続けるのは彼にとっても時間のムダではないか」と語った地元記者もいたものだ。
しかしその戦術が限界を見たところで、再びポゼッションの質の向上への欲求が高まる。その修正を図った試合で先発し、結果を残せたことは本田にとって大きかったはずだ。