【3点目のメカニズム】
勝負を決した3点目はハットトリックとなるスアレスのPKによって記録されたが、右サイドからゴール前に入ってきたムニルがDFに倒されるまでの流れは3得点の中でも、バルセロナならではの攻撃の厚みが表れていた。
広州のミスパスから左サイドの高い位置でジョルディ・アルバがマイボールにすると、イニエスタをフックに7本のグラウンダーパスをつないでスアレスとラキティッチのコンビネーションを演出。彼らによる仕掛けはカットされたものの、ブスケッツが素早くセカンドボールを奪って右のダニエウ・アウベスにつなぐ。
そこから右に開く動きでパスを引き出したムニルがダニエウ・アウベスとのワンツーでペナルティエリアの中に侵入し、左SBリ・シャオペンの背後を取りながらパスを受けたところで、カバーに来たファン・ボウェンに後ろ足を接触された。
完全に押し倒されたわけではなくラッキーな部分はあるものの、この展開で7人がアタッキングサード付近に絡んでおり、一度はカットされたところでブスケッツが拾い直して二次攻撃につなげられたのも、攻撃に厚みをかける中で次の準備をできているためだ。
ルイス・エンリケ監督はこの短い準備期間に3試合を選手たちに見せ、広州の特徴を共有していたことを明かした。“MSN”が揃った状態であれば、また違った崩しの形やゴールシーンが見られたはずだが、スアレスが貫禄のハットトリックを達成した中でもアジア王者を相手に崩しのメカニズムを発揮できたことは、リーベル・プレートとのファイナルにつながるものだ。
広州恒大のスコラーリ監督は「試合を通して多くのことを学んだ」と語っていた。バルセロナのスタイルをそのまま真似ようとする必要は無いが、彼らが見せたエッセンスは日本サッカーにとっても大いに参考になるものだ。また華やかなゴールにも多くはそこに絡むメカニズムや布石が存在することを今回の3得点も示している。
【了】