【2点目のメカニズム】
勝負を大きく左右するバルセロナの2点目が記録されたのは後半5分だった。左のジョルディ・アルバから中央でパスを受けたスアレスは手前のイニエスタにボールを叩くと、一気に加速して浮き球のスルーパスを引き出し、胸トラップから右足ボレーで合わせ、GKに触られたもののボールはゴールマウス内側の右サイドネットに吸い込まれた。
局面を切り取ればスアレスとイニエスタのコンビネーションだけで生まれたゴールにも見えるが、ここにもチームとしての崩しのメカニズムが見て取れる。
相手のオフサイドで得た自陣のリスタートから、ピケが右のライン際に張ったダニエウ・アウベスに預け、そこからブスケッツ、マスチェラーノ、さらにジョルディ・アルバとつなぎながら敵陣の左サイドにボールを運んだ。つまり右、左、左、左と4本のパスで逆サイドに展開しているわけだが、その間に右ウィングのムニルと右インサイドハーフのラキティッチは同サイドのワイドをキープしている。
それにより、広州の守備をワイドに開かせているわけだが、一方で左側には5人が近い距離を作る、つまり逆のエリアに攻撃の選手を残したままボールサイドに人を集めることで、バイタルエリアに一度ブランクを生み出していた。
この形は”MSN”という強力な3トップが確立されてからあまりトップチームでは見られなかったが、バルセロナにとっては伝統的な崩しの布石の1つだ。ここで興味深かったのはセルジ・ロベルト、結局この流れでボールを一度も触らなかった選手のポジショニングだ。
ブランクにしていた中央をスアレスが使い、イニエスタとの縦のワンツーで裏を突く直前に、セルジ・ロベルトはその外側で縦に走り、右SBチャン・リンペンとCBフェン・シャオティンの間を抜ける動きをすることで、ジョルディ・アルバからスアレスへのパスコースを作り、同時に相手の守備がすぐ中央に向かない効果をもたらしたのだ。
もちろんスアレスとイニエスタの完璧なまでの技術と呼吸があってこそのゴールだが、ピッチを広く使ったビルドアップから中を突くメカニズムにセルジ・ロベルトの絶妙な動き出しが絡むことで、2人のコンビネーションを発揮するお膳立てができあがったのだ。