アカデミー出身選手とスカウトした才能の融合
浅野は今季のリーグ戦で、後半15分ぐらいからの途中出場が主立っていたなか8ゴールを記録した。だが、リーグ試合当日こそトップチームしての切り札として出場するも、日常の練習では控え組のシャドーの一角をつとめていた。
リーグ終盤戦でも、紅白戦で浅野と野津田ら控え組は主力組を突き上げていた。野津田は「感触はいい、試合に出たい」と言い続けた。二人の居残りシュート練習も続いた。
明治安田生命Jリーグチャンピオンシップ決勝第2戦、浅野拓磨は事実上の優勝決定ゴールとなる、第2戦を1-1とする同点ゴールを奪い、リーグ王者を争う土壇場で強いメンタルを見せた。
広島が生んだ最初のベストヤングプレーヤー、森﨑和幸は地域育成の象徴、続いた浅野拓磨は、スカウトした才能が地域育成と融合した象徴となった。
現在では野津田が代表する、広島の地が育てた次代を担う才能。だが、同世代の選手不在でトップチームに昇格させれば、その世代の王様として伸びない可能性もあった。だが広島はその選手に匹敵するほどの、そして対照的で融和的でもある才能を探し出して迎え入れた。
二人を共にチームの屋台骨にすれば相乗効果も生まれる。それによって才能が昇華したのが今の浅野拓磨だ。
我慢に長けた指揮官、森保一監督が、二人の才能を個人として競わせた結果、先に花開いたのは浅野拓磨。だが、野津田岳人はここから巻き返すだろう。
2015FIFAクラブワールドカップ、そして天皇杯全日本サッカー選手権はもちろん、浅野と野津田の二人には、リオデジャネイロ五輪で日本を栄冠に導く“使命”がある。
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