ナビスコカップとのターンオーバーがもたらした好循環
だが、野津田はゴールデンウィークの過密日程中こそ先発の座を得たが、その後の出場時間は短かった。初ゴールを決めた浅野も扱いはスーパーサブで煮えきらない時期を過ごしていた。だが二人はアピールを続け、ヤマザキナビスコカップでの森保監督の大胆な采配によってチャンスを得る。
森保監督の「練習で力を見せている」という理由によるターンオーバーで、浅野は予選リーグ当初からワントップに入った。攻撃のパートナーであるシャドーには野津田岳人。これが二人に、ひいてはチーム全体に刺激をもたらす。
それはクラブ全体から見れば若手が主力を突き上げる構図を作り出し、足立強化部長の言う「ビッグネームの獲得でなく、競争という名の補強」というシーズン序盤からのチーム強化方針が結果に結びついていった(もちろんドウグラス自身の成長は2015シーズン優勝の大きな要因ではあるが)。
浅野はJ1初ゴールを奪った後、トップチームでは、佐藤寿人に代わる切り札として試合に出続ける。一定の地位を確保したようにも見えたが、本人は「先発してこそ」と言い続け、ターンオーバーがされた試合では先発し、ワントップ、さらにシャドーとして走り続けた。
野津田は、ゲームの中で浅野を使いながらゴールを奪うことを狙った。プロとしてお互いの良さを認めあい、チームとしても成長しながらも、いち早く自分がのし上がろうという思いは捨てていない。浅野と野津田の距離感は微妙。だがお互いについて聞くと「やりやすい」という感覚を持っている。
浅野と野津田らが構成するサンフレッチェ広島の(失礼ながら)控え組は、ヤマザキナビスコカップこそ予選リーグ最終節で敗退するも、天皇杯ではJ2の熊本、徳島相手に連勝してベスト8入りを果たした。
こうした公式戦での健闘以上に、彼らは日々の練習で、主力の“相手”でなく、“日常の敵”としてピッチで対峙し続けた。