“コンビ”でも“ライバル”でもない距離感
浅野のJ1初ゴールをあれほど喜んだ二人だが、「あいつがゴールすると内心は悔しい」と“コンビ”というほどの一体感はなく、かといって“ライバル”というほどには距離は置かない。お互いのプレーに信頼と絆はある、なんとも不思議な距離感がある。
初ゴールの試合後、浅野の獲得に大きく関わってきた強化部長の足立修は、前年に1勝もできなかった関東圏での勝利による連敗ストップに、安堵の表情を見せていた。
底辺は小学生のスクールに始まり、ジュニアユース、ユース、トップへとつながる“サンフレッチェ広島のプレーヤー”を束ねるのが強化部。この3月に就任したばかりの強化部のトップは、戦力を台頭させその層を厚くしているチームの序盤戦について「競争という補強」が成功しつつあると評していた。
サンフレッチェ広島が3度目のJ1チャンピオンとなった要因である「競争」は、リーグ序盤からすでにチームを成長させていた。特に際立っていたのが、「同期」の、しかもタイプとポジションの異なる「仲間」同士の競争意識だった。
昨オフ、地元広島市出身の野津田岳人はプロ入り後初めてという小学校時代の所属クラブであるシーガルFCの初蹴りに凱旋した。
チームの本拠地、エディオンスタジアム広島から車で15分ほどの距離にある、広島市西区の商業地域の“土のグラウンド”で、野津田は後輩たちとミニゲームで汗をかき、広島弁でなじみの友と談笑した。
野津田は「初めて戻ったけどやはりいいですね」と爽快な汗を流しながら語っていた。
ジュニアユースから紫のユニフォームに袖を通し、サンフレッチェの戦術のエッセンスを教え込まれた野津田は、高校3年生時に2種登録でJ1デビューを果たしている。
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