サポーターを実名とともに晒した新聞記事
新たに“ローイ2世”体制になった直後のFFAを激震が襲ったのは、豪州サッカー界がここ10年の進歩と成果に酔ったパーティーから、1週間も経たない11月22日のことだった。
スポーツジャーナリストのレベッカ・ウィルソンによる署名記事が、シドニーの有力紙の日曜版「サンデー・テレグラフ」に載った。一面には「入場禁止」と大書され、10人の入場禁止処分を受けたサポーターの顔写真と名前が晒された。
見出しは、“It’s time to stop the football louts.” “lout”とは「粗暴かつ攻撃的な振る舞いをする若い男」を意味しており、記事の内容を要約すれば、「粗暴な振る舞いで処分を受けた198名に代表されるAリーグのフーリガンカルチャーは許されない。それは(サッカーと競合する)他の競技には見られぬもので、サッカー固有の問題だ」というものになる。
この記事は、違反者の名前と顔写真を晒すという明らかなプライバシー侵害を犯している。それに加えて、本来は門外不出であるはずの違反者リストが、いったいなぜ流出したのかという謎は残る。
このリストの流出に関しては、シドニーFCが本拠地として使うアライアンツ・スタジアム(シドニー・フットボール・スタジアム)と周辺のスポーツ施設を運営するシドニー・クリケット・グラウンド・トラスト(以下SCT)の関与が疑われている。
かねてよりシドニーFCサポーターの観戦マナーを問題視していたSCTが、サッカーを敵視するグループにこのようなネガティブな情報をリークさせたのではないか、ということだ。
鍵となる人物が、シドニーで人気のラジオDJであるアラン・ジョーンズ。ラジオだけにとどまらず新聞やテレビでも露出が多い保守派の論客で、何かと問題発言の多い人物だ。
そして、サッカーファンにとっては、何かあるたびにサッカーを卑下した物言いを繰り返す、いわゆる“フットボール(サッカー)ヘイター”として有名だ。