記念イベントで発表された、連盟会長の“世襲”
本来であれば、2連勝に終わったサッカルーズのW杯2次予選11月シリーズのレビューと豪州サッカーのここ10年の進歩について、ポシティブな記事を書こうと思っていた。しかし、ここ数週間のAリーグ周辺の騒動を見るにつけ、さすがにこれについて書かずにやり過ごすわけにはいくまい-そう判断、急遽、今回の原稿を差し替えることにした。
もともと11月は豪州サッカー界にとっては、良い月になるはずだった。10年前の2005年11月16日、サッカルーズは、ジョン・アロイージ(現ブリスベン・ロア監督)のPK成功で32年ぶりのW杯出場を引き寄せた。
それから10年が経った2015年の11月16日、豪州サッカー連盟(FFA)は、そのドラマの舞台になったシドニーのANZスタジアムで、当時の代表監督フース・ヒディング、アロイージやブレット・エマートンら当時のメンバー、歴代の代表レジェンド、そして政財界の要人など約700名を迎えての記念イベントをシーズン中にもかかわらず盛大に催した。
その夜は豪州サッカー界の世代交代の象徴的な夜にもなった。豪州サッカー最大の大立者であるフランク・ローイが、長年務めたFFA会長職を辞して、その職を自身の三男であるスティーブン・ローイに“世襲”。翌日のFFA理事会での正式選出に先立って、一足早く、新会長の名がお披露目されたのだった。
長く父を補佐し、有能との評判がもっぱらのスティーブンではあるが、父から息子への世襲という前時代的な権力移譲は、FFAが“ローイ王朝”として引き継がれること、まだまだ気力溢れる父フランクの“院政”が当面は続くであろうことを印象付けた。