広島の夜空に沸き上がった紫の咆哮
会場は15時30分。キックオフ4時間も前である。入場ゲートは自由席スタンドで2か所、メインスタンドで1か所、アウェイ側1か所のエディオンスタジアムでは、この時間に開場しないとさばききれない。
そして一気に自由席のバックスタンドは紫の人で埋め尽くされていった。キックオフ3時間前ですでに通常のJリーグ開催の様相を超えたバックスタンドの光景だった。
選手を乗せたバスは、紫のサポーターが集い、フラッグと声援のエールで演出された、さながら紫のゲートのように迎えられた真ん中を通ってスタジアムに到着した。森保監督は車窓から眼下のサポーターに手を振った。
第1戦は広島から見てアウェイで3-2。第2戦の優勝条件は引き分け以上、負けても0-1と1-2なら90分内で許された。この選択肢の多さとは逆に、ガンバ大阪から見れば2点差をつけて勝てばいい。実にシンプルな逆転のシナリオだった。
森保監督は事実「どんな展開になっても、チームの絆を持って戦ってほしい」と状況の複雑とその難しさを試合前に描いていた。
前半27分。ガンバ大阪は遠藤のコーナーキックから今野が合わせて先制。望み得る最良のスタートを切った。次の1点は両チームにとって大きくのしかかった。それをどこで、どの時間で奪うか。勢いと沈着を持って戦いながら、次の得点の期待と失点への不安をどのように受け入れるか。広島にとってメンタル争いを告げる号砲のゴールだった。佐藤寿人は試合前に、ここで勝たないと年間34試合と勝ち点74が水泡に帰す旨の重圧を認めていた。
後半31分。第1戦のMOM柏好文とU-22代表の浅野拓磨で奪った1点は、試合でみればまだ同点。しかし2戦合計4-3の勝ち越しと、残り時間14分プラスアルファでガンバへ2点の要求を意味する、重い1点。21年の時を超えた、フルハウスのスタジアムで紫の咆哮が広島の夜空に沸きあがった。