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香川真司 9年前

全身の血が沸騰した香川の劇的決勝点。ドルトムントに勝利をもたらした「悔しさ」

text by 本田千尋 photo by Getty Images

「スタメンで出れない悔しさっていうは当たり前のようにある」

 しかし香川が「流れは変わりつつあって後半は相手の完璧な主導権」と言うように、徐々に流れはヴォルフスブルクに傾いていった。

 62分、ビリーニャのミドルをビュルキが弾いたボールを、さらにドラクスラーがシュート。ビュルキが左足で防ぐ。63分、ロドリゲスのミドルは、ビュルキの左手を掠めて、ゴールの右に外れていった。ロイスも「後半はヴォルフスブルクの方が良かった」と認めている。

 だからベンダーは、90分のヴォルフスブルクのPKを「然るべきもの」として捉えた。ドルトムントがシュールレによってこじ開けられた同点弾は、ヴォルフスブルクが腐心の末に辿り着いたものでもあったのだ。PKを決めたロドリゲスは、歓喜に手で顔を覆った。

 失望がBVBを覆う中、香川は決して悲観的にはなっていなかった。

「僕は途中出場もあったし、ここで何かしなきゃいけないっていう気持ちはあった」

 わずか2分で、歓喜と失望は反転する。

 エリアの手前、香川は右のピシュチェクへ。ピシュチェクはエリア内左のムヒタリヤンへ。そしてムヒタリヤンはゴール前の香川へ――。全てがダイレクト=技術が結合する。

「ここで何かしなきゃいけない」

 香川は左足でボールをゴールに叩き込んだ。2-1。

「スタメンで出れない悔しさっていうは当たり前のようにありますし、それをピッチに立ったときに、結果として証明できたことは良かった」

 この試合、香川は55分からの途中出場だった。

 ヴォルフスブルクの監督ディーター・ヘッキングは、試合前にわずかな差が勝敗を分けると予想する。

 対ヴォルフスブルク戦でドルトムントに勝利をもたらすこととなった「わずかな差」とは、スタメン落ちした香川が滾らせた「悔しさ」だったのかもしれない。

【了】

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