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Jリーグ 9年前

C大阪に生まれた“開き直り”。「生きるか死ぬか」で挑む運命の一戦

text by 藤江直人 photo by Getty Images

PO準決勝愛媛戦で見せた一筋の光明

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残り1節の時点で退任となったアウトゥオリ前監督【写真:Getty Images】

 11月29日に行われたJ1昇格プレーオフの準決勝。セレッソはホームのヤンマースタジアム長居に、後半戦の猛烈な追い上げで5位に食い込んだ愛媛FCを迎えた。

 4位でリーグ戦を終えていたセレッソは、引き分けでも決勝へ進める。勝つしかない愛媛は全員が体を張って守り、ボールを奪ってからは乾坤一擲のカウンターを何度も仕掛けてきた。

 両チームともに無得点で迎えた後半のアディショナルタイム。愛媛は3度獲得したコーナーキックでGK児玉剛も攻め上がるなど、文字通りの全員攻撃で相手ゴールを陥れにきた。

 実際、児玉の眼前をボールが通過したシーンもあった。あわやゴールの絶対的なピンチを、FW田代有三がラインぎりぎりで防いだシーンもあった。

 脳裏を「敗北」の二文字に支配されてもおかしくない劣勢で、DF茂庭照幸は自分自身にこう言い聞かせていたという。

「ここで弾き返して、一発点を取ってやる」

 その真意を、もう少し詳しく聞いてみた。

「もちろん冷や冷やの時間帯でしたけど、それで受け身になれば腰が引けちゃうことが多い。ならば強気になるというか、気持ち的には常に前向きでした」

 後半アディショナルタイムの最中には、ボランチの橋本英郎がDF中澤聡太と交代している。時間稼ぎというよりも、足をつらせた橋本のプレー続行が不可能と判断されたからだ。

「ああいうシーンも、シーズンを通してあまりないことだったので」

 タイ・プレミアリーグのバンコク・グラスFCでのプレーを経て、2年ぶりに復帰した茂庭は、その間のチームの変化を感じ取っていたのだろう。橋本のプレーが物語る“意味”をこう続ける。

「ここまできて、ようやくすべてを出し切れているということ。ベンチには本当に素晴らしい選手が控えているし、誰が出てもやれると思うから、その意味で全員が全力を出し切る。それでダメなら仕方のないことだし、全力を出せないのであればピッチに立つ資格はない。生きるか、死ぬか。そういう戦いのほうが相手に脅威を与えるし、セレッソにとってはプラスになる」

 茂庭が指摘した愛媛戦での戦いぶりにこそ、伝統の「何苦楚魂」が体現されていた。極限にまで高まった集中力に導かれた、執念と闘志がこもった泥臭いプレーの数々。それらがピッチ上に戻ってきたのは、負けたら終わりのトーナメントに突入したことだけが理由ではない。

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