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ベンダーが切り開いた新たな世界。「本職」ではないCBにも喜び見出す“ボール奪取のモンスター”

text by 本田千尋 photo by Getty Images

ポジションの『向いている/向いていない』とは?

 ドルトムントを例に取っても、8月のベティスとの練習試合でベンダーとCBでコンビを組んだギンターは、今ではすっかり右SBとして定着している。ドイツ代表にもSBとして名を連ねるようになった。

 13年7月にサンテティエンヌから加入したオーバメヤンは、当初はSHでプレーしたが、クロップ政権の最後の年から1トップに入った。昨季は機能し切れたとは言い難かったが、トゥヘルの下でゴール前の動きは洗練され、現在は17ゴールと得点ランキングでトップに立っている。2位のバイエルン・ミュンヘンに所属するロベルト・レヴァンドフスキに3ゴールの差を付けている。

 また今季の香川真司は、基本的にはインサイドハーフのポジションに入っているが、やはり流動的なものだ。CBとSBの間に入ってはビルドアップに関与し、ボランチのように映ることもあれば、ウイングのように積極的にゴール前に顔を出すこともある。

 いずれにせよ重要なことは、それが決して“やりたいポジション”ではなかったとしても、ベンダーのように積極的に取り組み、喜びを見出すということなのだろう。

 明日も知れぬほど生存競争の激しいフットボールの世界では、なおさらのことだ。気付けばベンダーはCBのポジションの序列で、スボティッチを追い抜いている。またギンターやオーバメヤンのように、昨日とは違う、新たな世界を切り開くことにも繋がっていくだろう。

 フットボールにおける“本職”は、根拠のないレッテルとも言えるのかもしれない。向いている/向いていないは、誰かが決めることではないのだ。

【了】

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