「何よりもタイトルを取るための仕事を」
ガンバ大阪との前節で約6年ぶりにイエローカードをもらい、連続無警告試合が193で途切れたことが大きなニュースになった佐藤は、かねてからこんな言葉を残している。
「よくない行為を子どもたちに見せるのは、プロとしてどうなのか。僕自身、カズさんやゴンさんがそういうことをしてカードをもらったという記憶がない。最高のお手本だと思うし、2人を観て育った僕たちがJリーグを、そして日本のサッカーしっかりと発展させていかないといけない」
スタンドで父親の偉業を目に焼きつけた玲央人君と里吏人君はいま、サンフレッチェのサッカースクールに通っている。佐藤にとって中山がヒーローだったように、愛息たちと同じ世代の子どもたちもまた、最終節のピッチで雄叫びをあげた背番号11に憧れる。努力すれば夢はかなうと勇気ももらう。
背中を見られる存在になったことを意識しはじめたのか。レッズのペドロヴィッチ監督が「J1で200点も可能」と佐藤に言及した、某雑誌のインタビュー記事を思い出しながら佐藤は笑う。
「不可能ではないと思うけど、それ以上にプロになってからのキャリアで通算300ゴールを達成したい。いまは260とちょっとなので、そのほうが速いかな。
チャンピオンシップでのゴールもカウントされるし、何よりもタイトルを取るための仕事をしっかりと遂行したい。僕は欲の塊なので。今日勝ったことで、次への欲が出てきました」
新しい引き出しを増やすことに前向きな姿勢を見せながら、一方でゴールに込める矜持も忘れない。永遠のサッカー小僧のような心と、熟練の域に達したベテランの面影。異なる顔を同居させながら、佐藤はレッズとガンバ大阪の勝者と対峙する、12月2日に幕を開けるチャンピオンシップ決勝へ照準を定める。
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