佐藤が「楽しむ」相手DFと副審との駆け引き
そして、2点をリードして迎えた前半42分。佐藤が待ち焦がれたチャンスが訪れる。左サイドを突破したMF清水航平があげたクロスは、ノーマークの状態でファーサイドにいた佐藤の頭と完璧にヒットした。
今シーズン最多の3万3210人で埋まったスタンドが大声援で揺れる。自軍のベンチへ疾走し、背番号の部分に「157」が記された記念ユニフォームを手渡された佐藤は、試合中では異例となる胴上げで3度宙を舞った。
「できれば右足で決められればよかったんですけど」
右足のスパイクを介して念を込めてくれた愛息たちの姿を思い出しながら、佐藤は待望のゴールが生まれた要因を「楽しさ」に求めた。
「湘南のアンドレ・バイア選手と、ずっと駆け引きをしていました。自分がポジションを変えればバイア選手も気にしてポジションを変えてきましたし、自分がニアに入ろうとしたら『入らせないぞ』という感じで少し早く反応して入ってきた。あの場面で一瞬、相手を上回れたのは自分らしいプレーではあるのかなと。
動き出しのなかで駆け引きを演じながら、相手の背後を上手く取れました。それまでは相手の視野のなかでプレーすることが多かったけど、あのときは相手をしっかりと無力化することができました」
佐藤が駆け引きを「楽しむ」相手は、何も相手ディフェンダーだけではない。オフサイドか否かをジャッジする副審とも、視線と表情を介して佐藤は会話を重ねている。