プレッシャーに打ち勝ち最多得点とステージ制覇成し遂げる
利き足とは逆の右のスパイクの目立たない部分に、佐藤寿人は英字で刺繍を入れている。『REO』は11歳の長男・玲央人(れおと)君を、『RIRI』は8歳の次男・里吏人(りりと)君を表す。
湘南ベルマーレをホームに迎えた、22日のセカンドステージ最終節。愛息たちの手を握りながらピッチへ入場する直前に、佐藤は2人にスパイクの刺繍部分を触らせた。
「今日決められるように念じてくれ」
名古屋グランパス戦の前半9分にゴールを決めて、中山雅史のもつJ1歴代最多ゴールにあと1点と迫ったのが8月29日。レジェンドに追いつき、追い越すのは時間の問題と思われながら、7試合、時間にして502分間もゴールネットを揺らしていない。
前節までならすっきりと目覚められた試合当日の朝が、ベルマーレ戦のときだけは違った。中途半端な思いが、頭のなかから消えない。久しぶりに味わうプレッシャーだった。
「今日この試合で34節が終わってしまうことに対して、大きなプレッシャーを感じていました。今日ゴールを決めないと多くの方々の希望というものが流れてしまうし、王手をかけてから毎試合取材に足を運んでいただいた大勢のメディアの皆さんの期待も感じていたので」
もっとも、自らのプレーに対する自信は失っていなかった。無得点が続いた7試合は5勝1分け1敗。確実に勝ち点を積み重ね、セカンドステージ制覇と年間総合1位獲得に王手をかけた軌跡を「やるべきことをしっかりとやってきたから」と受け止めている。
要は時間との戦い。チャンスが訪れたときに、焦ることなくゴールネットを揺らすことができるか。いざキックオフの笛を聞くと、最前線で集中力を研ぎ澄ませ続けた。