日本では脳震とうに対する危機感が希薄?
また、アメリカ以外の国にとっても、脳震とうのリスクを認知するいい機会になったことも確かだ。実際、日本では脳震とうに対する危機感が希薄だ。
例えば、もう一年も前の話になるが、2014年11月8日、中国・上海で行われたフィギュアスケートのグランプリシリーズ第3戦男子フリーの直前練習中に、羽生結弦選手が他の選手と衝突し、脳震とうを起こす事故があった。
本来なら棄権するべきところを、羽生選手はプレーを強行。包帯を巻きながら演技を完遂し、2位入賞を果たしたことに対して多くのマスメディアが美談として報じた。
しかし、これは医学的な観点からはNGであることは上記の通りだ。脳震とうの症状が出れば、選手の意志に関係なくプレーをさせない。そんな欧米では普通に行われるようになりつつある処置が、日本では行われていない。
そういう意味では、日本にとって、あるいは日本同様に正しい処置が行われていない国にとって、米国が明確に禁止するというスタンスをとったニュースが広まることは各国でも正しい処置が行われるようになる契機になる。その点でも意義のある決定だと言えるだろう。
一方で、デメリットがあることも否定しない。ヘディングというプレーは危険ではあるかもしれないが、サッカーを構成する重要な要素にうちの一つであることは言うまでもない。
低年齢期にヘディングというプレーを避けることで、守備の際にロングボールを跳ね返す、あるいは攻撃している際にクロスを頭で強引にねじ込むといった頭を使うプレーを得意とする選手が減ってしまう可能性は十分ある。これは技術的な観点では大きな痛手だ。
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