失点が少ないだけでも優勝できない
横浜F・マリノスは32失点で今季を終えた。鉄人・中澤佑二を軸にファビオもCBとして急成長するなど、堅い守備を構築してきた。今季は監督が代わったが、守備の強さというカラーが薄れることはなかった。
ただ、攻撃面では前線の個人能力に頼る傾向が強かった。中村俊輔、齋藤学、アデミウソンの2列目は実力的にもネームバリュー的にもJ屈指の3人だろう。彼らがボールを持てば何かが起こるのは明らかで、特に中村がボールを持ったときの周囲の推進力は勢いがある。
絶対的な存在である10番を信じているからこそ、チームメイトは思い切って相手ゴール前に進入することができた。だが、中村を封じられるとコンビネーションは影を潜め、単独で打開しなければならないシーンが途端に増える。齋藤とアデミウソンは傑出した能力を持つが、対戦相手も黙ってはいない。
象徴的だったのが2nd第16節の鹿島戦だ。ヤマザキナビスコカップ優勝の勢いそのままに鹿島が鋭い出足でボールを狩りにいく。横浜FMはそれをいなすことができず、頼みの中村に良い形でパスが渡ることもなかった。
何とか前にボールがついても「個で何とか行ってた」状態だったと中村は振り返る。そして、横浜FMの大黒柱は「今まで通用していたことが通じなかったり、浮き彫りなった。負けたのはしょうがない。戦術より個々の差」と完敗を認めていた。
失点を少なく抑えても得点を奪うための明確な形を構築できなかった。横浜FMは7位でシーズンを終えた。
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