イングランド代表がフランスに示した連帯
ウェンブリースタジアムのシンボルマークである半円状のアーチは、赤、白、青に輝いていた。
漆黒の夜空に浮かび上がった、フランス国旗を象徴するトリコロール。それぞれの色を意味する『Liberte、Egalite、Fraternite(自由、平等、友愛)』の文字が、スタジアムの壁面に刻まれている。
パリで残虐な同時テロ事件が起こった4日後の11月17日。ロンドンのウェンブリースタジアムは、フランス代表を迎えて予定どおりイングランド代表との親善試合を行なった。
キックオフの前には、追悼セレモニーがとり行なわれた。公務の予定を変更して駆けつけたウィリアム王子がロイヤルボックスからピッチに下りて見守る中、両国が国歌を斉唱。
FA(イングランドサッカー協会)は、フランス国歌の『ラ・マルセイエーズ』を自国国歌の後に演奏することでフランスへの敬意を示し、スクリーンには歌詞が映し出されて観衆全員で感動的な合唱…のはずだったが、実際には歌えていた人は多くなかった。
フランス語の歌詞となれば難しいのも当然である。皮肉好きなイギリス人は「自分の国の『ゴッド・セーブ・ザ・クイーン』だって歌えないのに、フランス語の歌詞なんて無理」と失笑し、企画倒れ気味ではあったのだが、催したこと自体に意義がある。
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