成熟度が低かったベニテスのファーストチョイス
この悪循環がクロース&モドリッチにはさらに重くのしかかった。カバーするべきスペースはあまりに多く、攻撃に転じようにもチームとして同じ方向を向けていないためゲームメイクは全く機能しない。
その結果、マドリーの攻撃に連係は生まれず個人技に頼る状態に。ロナウド、ベイル、ベンゼマ、ハメスといえど、コンビネーションが皆無で孤立すれば、バルサクラスのチームにとって止めることはさほど難しくはない。
守備面でも中盤の2人をサポートするためにCBのセルヒオ・ラモスが前にプレスをかけると、そのギャップを突かれてピンチを招く。“アンカーのカゼミーロ”というたった1人のピースを欠いただけでマドリーはピッチ上全てで機能不全に陥ってしまった。
昨シーズンのクラシコもクロース&モドリッチが中盤を形成してホームで3-1と勝利を収めているが、カルロ・アンチェロッティ監督はこのコンビをメインとして起用していたため、攻守の役割が明確となっていた。
しかし、今季はクロース&モドリッチの2人のみで中盤を形成するのはビルバオとの第5節以来。さらにロナウド、ベイル、ベンゼマ、ハメスが同時先発するのは第2節ベティス戦以来となる。ベニテス監督がファーストチョイスとして準備していたプランは、限りなく成熟度の低いものとなってしまっていた。
対するバルサは、ディティールこそ変化しているものの、チームとしての根幹は変わらず貫き続けている。一部では、ルイス・エンリケ監督を「何もしない」と批判する声もあるが、何もしないからこそ勝っているといえる。今のバルサには最も適した監督である。
どんなに高額で優れた選手を抱えていようと、継続性や連係力がなければ力は半減するということだろう。“まさか”や“衝撃”と伝えられるであろうこの結果は、実際には“必然”の結果だった。
【了】