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サッカー界ができる“テロとの戦い”。パリの大きなテロ事件とカンボジアの小さな試合から考える

text by 植田路生 photo by Yukiko Ogawa , editorial staff

小さな試合に隠された大きな意義

サッカー界ができる“テロとの戦い”。パリの大きなテロ事件とカンボジアの小さな試合から考える
パリ・テロ事件の2日後の11月15日、フランスから遠く離れたカンボジアで1つの国際試合が行われた【写真:編集部】

 パリ・テロ事件の2日後の11月15日、フランスから遠く離れたカンボジアで1つの国際試合が行われた。現地クラブ、カンボジアンタイガーFC対アビスパ福岡U-18の一戦だ。17日に試合を行った日本代表とは比べものにならないほど小さな注目度だったが、そこには大きな意義が隠されていた。

 技術的に勝るアビスパが勝利すると予想されたが、若い選手たちは酷暑で体が思うように動かず、劣悪なピッチに最後まで慣れることなくボールをコントロールできなかった。まさに国際試合、アウェイの洗礼を浴び、4-1で敗れた。

 試合に特別枠として途中出場した宮原裕司コーチは、「ピッチが悪いと思うのか、相手も悪いからラッキーだと思うか。それが対応力だし、考える力。ピッチ外の部分も含めて何を感じるか。色んなクエスチョンに対して僕ら(指導者)が言うのではなく自分でどう感じていくか。勝ちたいなら感じるしかない」と、普段とは違う環境下での“気づき”の大切さを語る。

 また、藤崎義孝アカデミーダイレクターは選手たちを現地の孤児院に連れて行ったエピソードを交えて、「この世には生きたくても生きられない人々もいる。いかに自分たちが恵まれた環境にいるか感じろと口酸っぱく言った。国内で同じことを言ってもなかなか通じない。実際に目の当たりにして変化はあると思いますよ」と強く語る。

 今回の遠征はピッチ内のハードワークや球際の強さを学ぶ上で有意義だったのは間違いないが、海外渡航が初めてという選手が多い中で異文化と接触できたことは大きな財産となったはずだ。「サッカー以外でも大きな意義がある」とカンボジアンタイガーの加藤明拓オーナーも力説する。

「日本と一番違うのは生まれた環境。ハングリーさはもちろん、価値観はまったく違う。日本人の中にはどこかで現地人を下に見ている人もいる。欧米にコンプレックスを持つのと同様。それは島国の中で閉じこもっているからで、外に出ることで色んなことを感じることができる。早くから感じることで変われる。さらに下の年代でもできるといい」

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