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アジア 9年前

「ベトナムのメッシ」が切り拓く、「日本経由ヨーロッパ行き」モデル

Jリーグへの移籍が噂されている「ベトナムのメッシ」ことFWグエン・コン・フオン。このベトナム代表FWの日本行きは、所属クラブも後押ししているものだという。彼らはなぜ有望株の日本行きを推進するのだろうか? 現地在住記者がこの移籍の裏側を読み解く。

text by 宇佐美淳 photo by Jun Usami

有望株を日本へ送り出そうとする大富豪

「ベトナムのメッシ」が切り拓く、「日本経由ヨーロッパ行き」モデル
「ベトナムのメッシ」ことグエン・コン・フオン【写真:宇佐美淳】

 ベトナムサッカー黄金世代の代表格であり、「ベトナムのメッシ」の異名で知られるFWグエン・コン・フオン(20歳)がJ2水戸ホーリーホックへの期限付き移籍で合意に至ったと報じられている。彼以外にもJリーグ移籍が噂されるベトナムの若手は何人かいる。なぜ彼らは日本を目指すのか、なぜクラブ側はそれを推進するのだろうか。

 日本移籍が報じられているのは、前述のグエン・コン・フオン、そして、J2横浜FCが獲得を狙っているとされる「ベトナムのピルロ」ことMFグエン・トゥアン・アイン(20歳)だ。両選手はいずれも「黄金世代(昨年のU-19ベトナム代表)」の中心選手で、現在はベトナム1部Vリーグのホアン・アイン・ザライ(HAGL)に所属している。

 HAGLは、不動産開発企業大手ホアン・アイン・ザライが所有するサッカークラブ。会長のドアン・グエン・ドゥック氏はベトナム第2の大富豪で、国内では知らない人はいないといっていいほどの超有名人。ベトナムサッカー連盟(VFF)の副会長も兼任している。

 サッカー狂として知られる同氏はかねてから、サッカーに莫大な投資をしており、育成分野では、英アーセナルおよび仏JMGアカデミーと提携して、全寮制のHAGLアーセナルJMGアカデミーを運営している。ここでは、将来的に選手を海外に輩出することを目指し、英語やフランス語など語学教育にも力を入れている。因みに「黄金世代」の7割がこのアカデミー出身者。また、ラオスにもクラブ(HAGLアッタプー)を持っており、HAGLはラオスリーグのスポンサーも務めている。

 今回のグエン・コン・フオンの日本移籍も同会長の意向が大きく影響している。日本行きを推進する理由としては、ラフプレーが横行するVリーグで若い才能を潰したくないということ。そして、「黄金世代」が国民的アイドルとなったことで、加熱傾向にあるメディアから選手を守りたいということがある。

 その過熱ぶり、人気ぶりを表す材料として、いくつか例を紹介しよう。グエン・コン・フオンのFacebookページのフォロワーは、約119万5600人(2015年11月現在)で、元コンサドーレ札幌のベトナム代表FWレ・コン・ビン(約49万8700人)の2倍以上。Jリーグが運営しているベトナム語版Facebookページの「いいね!」の数は、同選手が水戸との移籍交渉で来日した僅か数日間で75倍にまで膨れ上がった。なお、HAGLの株価は、同選手の移籍報道の後、ストップ高となっている。グエン・コン・フオンはもはやベトナムの社会現象だ。

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