“デュエル”でも強さを発揮
基本的にこう攻めようというチームの方向性はあっても、周りの選手と相談しながら組み立てられるのが柏木の持ち味だ。柏木がボランチの位置から安定的にパスを配れることで、清武や香川が常に高い位置で仕掛けの起点になることに専念できる状況を生んだことも大きなメリットだ。
また「最初は裏を突いて行こうと思った。前半は思った以上に向こうもラインがそんな低すぎないというか、つなぎながら裏を狙えた」と振り返る様に、対戦相手の守り方も情報として取り入れ、必要なプレーを選択できる。そうしたクリエイティブな能力が久々の代表戦でも活かされた。
その一方でハリルホジッチは中盤の選手にデュエル(球際の強さとほぼ同意)を強く求める監督でもある。その意味でシンガポールが相手とはいえ、守備面も無難にこなせたことは大きい。
「フィジカル的にモンスターではないが、デュエルもしっかりやってくれる」という指揮官の評価をプレーで証明してみせた。特に味方がボールを奪われた瞬間の切り替え、そこからボール保持者にプレッシャーをかける意識はこのチームのボランチらしさも出していた。
「切り替えてボールを奪いにいくところも自分の中でできたし、球際も今日は勝てたんじゃないかと思う」
そう手応えを語る柏木は局面で高い機動力を出せるタイプではないが、90分をトータルしたスタミナは豊富で、シンガポール戦も暑さの中でチームがやや間延びした時間帯でも柔軟にポジションを取って危ないエリアを消すなど、危機管理の意識も目に付いた。もちろん相手が強くなればまた状況が変わってくることを柏木も認識している。
「相手が相手ということもあるから、全然満足はしてないし、ただ選手の特徴も掴みながらできたらそこに対してポジティブというか。そういう試合でもしっかり自分の役割を果たせたというところは自分でも評価しているし、監督がどう思っているか分からないけど、評価してもらっているところもあったと思う」