意地であり誇り。ダービーが意味するもの
沸騰寸前だったジグナル・イドゥナ・パルクが暴発した。30分のことだ。
カストロとのワンツー。ギンターが右サイドの深くに入る。クロスを送る。香川真司が跳んだ。ヘッドで叩き付けた。
「集中していましたね、しっかりミートすることを」
渾身の一撃=ボールはフェアマンの手を掠めて、ゴールに吸い込まれていった。FCシャルケ04との“レヴィアダービー”で、ボルシア・ドルトムントが先制する。1-0。
香川は「やはりダービーですし、特別な雰囲気はあった」と振り返る。ギュンドアンは「雰囲気はセンセーショナルなものだった」と感じた。2015年11月8日の日曜日は、「特別な」日だった。
「ダービー」とは、歴史や伝統といった小難しい話ではない。隣町のヤツらに負けたくない。ただそれだけのことだ。
隣町のヤツらだけには――。シンプルな原理に突き動かされて、およそ8万の観衆は、試合の始まる前から沸点を抜けようとしていた。ブンデスリーガの第12節は、何かを賭けたビッグトーナメントのファイナルに姿を変えた。
何かとは、意地であり、誇りであり、目の前のライバルを叩きのめそうとする…とにかく、闘争を呼び起こす全てのものである。
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