現役引退を表明。チャ・ドゥリへ贈った感謝
3点目も高萩から。終了直前の決定的とも思えたリードにコーナーサイドでボールキープを狙う動きから一転、ゴール前へのクロスを送ると、DFはクリアが精いっぱい。このコーナーキックをソウルのコロンビア人選手、モリーナが自慢の左足を一振り、鮮やかな弧を描いて直接ネットに吸い込まれた。
3-1、完勝ムード漂う追加点と納得の軌道に、モリーナはご愛嬌とも言えた上半身のユニフォームを脱ぐパフォーマンスで喜びを弾いた。
直後に韓国プロサッカー今シーズン最初の優勝チームを告げるホイッスル。高萩はその瞬間、周りを見渡して、試合後にこの決勝を最後に現役引退の表明をした、元韓国代表のMFチャ・ドゥリの元へ一目散に走り、抱きついた。
高萩は、決勝前会見で、ソウルに来て親密に接してくれたこと、チームに溶け込む橋渡しをしてくれたことに感謝を述べて、カップをチャ・ドゥリにささげたいと公言していた。
優勝後、韓国最大のテレビ局KBSのインタビューに「今日の優勝は、ドゥリさんのために勝ちたいと思ったので、ゴールも、勝利もドゥリさんにプレゼントしたい」と答えた高萩。異国の先輩がくれた配慮は、「ドゥリさん」と呼ぶ語り口で充分に伝わっていた。
チャ・ドゥリへの感謝を示した終了直後、歓喜に沸き続ける、ピッチ、スタンドとFCソウルイレブン。一方で冷静に優勝セレモニーの準備をするスタッフ。その一人が高萩の腕をつかんだ。一人歓喜に沸く輪を離れる。ああ、MVPなんだと知った。衝撃の先制ゴール以外にも間接的に2得点に絡んだ高萩のMVPは妥当だった。
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