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アジア 9年前

高萩洋次郎が手にしたWタイトル、韓国FA杯優勝とMVP。アジアを席巻する日本人司令塔の躍動と誇り

text by 竹島史雄 photo by Getty Images

終盤に地力の差を見せつけたFCソウル

 だが試合は後半に入り、今季のKリーグでは対戦成績で2勝1分けと差を見せていたソウルのペースダウンとインチョンのペースアップが重なる。再び筆者とのやりとりで「ロングボールに対応するのと、ロングボールを蹴る前のプレッシャーがちょっと緩くなってきたなと思っていた」と振り返った後半26分、インチョンが同点ゴールを奪う。

 日本的には言えばパワープレー。だが時間がない中でのスクランブルでなく、全員がパワーのある韓国にしてみれば、普通に、ボックス内でFWの頭に合わせてこぼれを狙う戦術。それでも192センチのFWに合わせられれば180センチを超えるソウルのバック陣でも手を焼いた。

 同点延長の可能性を残すにもかかわらず後半16分までに3枚の交代カードすべてを切ったインチョンの執念が実ったゴールだった。それでも高萩は「ボールに厳しくいくのと、あとはセカンドボールを拾って、間延びはしていたのでしっかりゲームコントロールしないといけないなと思ってボール落ち着かせることをしました」とギアアップするには慎重に試合を進めた。

「個人の能力が高いので、しっかり2点目、3点目奪えるというのは、このチームの力。ソウルの強み」と語った終盤はFCソウルが地力の差を見せる。ブラジル人ストライカー、アドリアーノの決勝ゴールは後半42分、一瞬の動きと判断ミスだった。

 高萩が守備ボックスの中に入り引きつけることで、4人のラインを下げさせてできた右サイドゴール30メートル付近、アタッキングサードの入り口のスペース。リベロのパク・ヨンウが右サイドからカットイン左足で送るクロスにアドリアーノはDF裏へ抜ける。

 インチョンのセンターバックがクロスを弾き返すと思った刹那、ボールは頭上を越えてアドリアーノの足元へ落ちる。アドリアーノ、反転して右足を一振り。ゴールインと共に韓国サッカー名物のゴールスタンド前花火が打ちあがった。

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