高萩の安定感を引き出す指揮官との信頼関係
選手時代、ピッチの上では激情家のイメージが強いFCソウルのチェ・ヨンス監督(元韓国代表FW、Jリーグでは市原、磐田、京都でプレー)は、監督としては試合中、落ち着いた佇まいで試合の流れを見つめる。だが、高萩のゴールに場内リプレーで見たチェ・ヨンス監督は驚きと歓喜を全面にした。当然ではあるが。
現地記者は高萩のソウルでの安定感をJリーグ経験のある監督との「相性を感じるか?」と表現して尋ねた。「監督はどんな状況でも信頼して、僕のことを試合で使ってくれているので、僕も監督を信頼して、要求に応えるように、チームが勝てるようにというプレーを心掛けています」と高萩。
日本語に訳されるときに響く「信頼」の言葉(韓国語でも同じくシンライに近い音)に現地記者もうなずく。ソウルに来てから90分フル出場は少ない。ミッドウィークで日程が厳しい時にKリーグを休ませることもあった。コンディションを重視しながら、司令塔として先発を委ねる采配は、チェ・ヨンス監督の高萩への「信頼」を充分に感じさせた。
FAカップ決勝、1点をリードして、チェ・ヨンス監督は落ち着けとばかりに両手を下に抑えるジャスチャーをした。高萩は前に行きたがる選手を抑えるように、ボランチの位置まで下がりセンターバックとのパス交換でボールをキープすることにかかる。
センターバックからFWへのロングパスで攻撃のスイッチを入れる韓国スタイルで、センターバックとのパス交換とキープは試合を落ち着かせる局面の手段として効果的だ。高萩のところで時間を作り、試合の流れを読む選択も監督の「信頼」を呼ぶ要因だろう。前半は1-0で終える。
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