フィニッシャーとパサー。両方の顔を示す
決勝は開始早々からホームでの戦いにソウルがインチョンを相手陣内に押し込んだ。FWに171センチのブラジル人・アドリアーノと178センチのユン・イルロク。韓国らしく大型FWを置くのでなく、裏へのスピードとスペースでのクイックネスに活路を求めるスタイル。
それでも“Kリーグらしく”頻繁にロングボールを相手スリーバックの両ワイドに供給することころからゲームはスタートした。セカンドボールを収めるソウルにあって、前半4分の両チームファーストシュートは高萩のミドルシュートだった。
一方で前半21分にはゴールコースが見えた場面で、FWアドリアーノへのクロスを選択している。この時は冷静な高萩に、こちらも苦笑いした。
現地記者の、インチョンがラインを下げることによって中盤のスペースが空いていたのではという質問にも「下がっていてもスペースは空いていたのでやりづらさは無かった」と語ったほど最前線でのゴールチャンスを作り出す余地は充分にあった。
フィニッシャーとパサー、両方の顔を提示した後に、この日のテーマ、ミドルシュートを見せる。前半25分、CKのこぼれ球を左足で豪快にボレー、これはクロスバーをかすめて外れるも、シュート意識は相当に高かった。決意のシュートは前半33分のMVPゴールに豪快な形でつながった。
やはり、一瞬で見せた技術面を「覚えていない」と語るほど自然に動いた経験に任せる右足のシュートは、「思いっきり」によって沸き起こった本能的な一振りと見ていいだろう。
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