海外移籍を経て成長を実感するキック力
それほど本能的で感覚的なキックだったのか?
右サイドを支配したソウルが、機動性の高いFWユン・イルロクのワンタッチパスをへて高萩に託したパスは、さほどに丁寧なものではなかった。高萩はトラップを浮かせるもボールの落ち際を右足アウトサイドでこするようにミドルシュート。ループ気味にインチョンユナイテッドの184センチGKユヒョンの伸ばす手の先を超えてネットイン。それも高速のシュートだった。
高萩らしいテクニックと、オーストラリアと韓国の移籍を経て成長を感じさせたキック力の向上が合わさっていた。
筆者が2010年のヤマザキナビスコカップ決勝(サンフレッチェ広島3-5ジュビロ磐田)で延長に入り高萩のミドルシュートがクロスバーをたたいた話を振ると、「覚えています」と苦笑いしながら「試合前のバスの移動中に、ミドルシュートの映像とか見て、今日こういうのが必要かなと思っていた。アップ中もシュートの感触とかすごく良かったので、キックの感触がすごく良かったので、思いっきり打ってみようかなと思って」と準備があったことを明かした。
そして「イメージとキックがちょうどよくリンクして、ラッキーですね、こういう試合で決められるのは運がないとできない。サッカー人生でもなかなか決めるようなゴールじゃない」と広島時代に苦杯をなめ続け(ヤマザキナビスコカップ2回、天皇杯2回)「嫌なイメージ、嫌な印象しかなかった」カップ戦決勝の重みと悔しい過去を「その経験が活かせたのかな」と豪快に振り払い、爽快感を表した。
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