主力として初めて掴んだタイトルにも満足せず
迎えたナビスコカップ決勝。空中戦でも地上戦でも、昌子はパトリックとの死闘のほとんどを制した。パトリックにボールが収まらなければ、宇佐美が逆サイドから仕掛けてくるパターンも、左右に開いたパトリックと宇佐美が作り出したスペースを倉田秋や阿部浩之が突くパターンも奏功しない。
パトリックが昌子に見舞ったラフプレーはガンバの攻撃をけん引できなかったフラストレーションと、常に目の前に立ちはだかった昌子へのいら立ちが凝縮されていた。逆の見方をすれば、それだけ昌子の成長を物語っていたことにもなる。
「人にも強くいけないと、この先プレーの幅的にも広がっていかないと思うので。もっともっと、センターバックの幅というものを広げていきたい」
昌子はパトリックを沈黙させた90分間を笑顔で振り返りながら、主力として初めて手にしたタイトルの重みをかみしめた。約3年間に及んだ無冠の期間を終焉させた喜びはある。それ以上に、一度だけの戴冠で満足することを、常勝軍団の歴史と伝統が許さない。
「間違いなくチームが前進するタイトルだと思うし、僕自身のキャリアのなかでも大きなタイトルだったかなとも思う。でも、これで常勝軍団が復活したとは、おそらくチームの全員が思わない。ここではさまざまなプレッシャーがある。タイトルが取れないと周りからいろいろな目で見られて、それこそタイトルに関わらなかったら弱いとまで言われるチームなので。
もう23歳になる年ですし、僕たちももう若手じゃないと思っている。下にはもう何十人もいるわけで、そういう選手たちを僕や(柴崎)岳、(土居)聖真や梅鉢(貴秀)がしっかりと引っ張っていかないと。僕はもう中堅に入ったと思っているので」
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