ハリルホジッチ監督から飛ばされた厳しい檄
他のJクラブの追随を許さないタイトル数を誇り、いつしか常勝軍団と呼ばれるようになったアントラーズの屋台骨を背負うことの難しさ。センターバックは黎明期から空中戦と地上戦で無類の強さを発揮する武闘派と、カバーリングとポジショニングに長けた頭脳派がコンビを組むことを伝統としてきた。
自らは後者と信じて疑わなかった昌子の既成概念を、歯に衣着せない言葉ともに木っ端微塵に打ち砕いたのが日本代表のヴァイッド・ハリルホジッチ監督だった。
待望の初キャップを獲得する3月31日のウズベキスタン代表戦の数日前。大分市内で行われていた短期合宿中のグループ面談で、積み重ねてきたスタイルに軒並みNGを突きつけられる。
「相手をリスペクトしすぎていると言われました。優しく当たりにいって、逆に相手にひじ打ちを食らっていると。試合中は常に強気でプレーして、激しくいきすぎたら試合後に謝ればいいとも言われました」
秋田豊から岩政大樹と、歴代のディフェンスリーダーを務めたレジェンドの象徴だった背番号「3」を託された今シーズン。コンビを組む相手がサンフレッチェ広島から完全移籍で加入した韓国代表のファン・ソッコに代わっただけでなく、昌子自身のプレースタイルにも新たな項目がつけ加えられた。
激しく、泥臭く。ハリルホジッチ監督の檄を受けて「ピッチの上に立てば、それこそ人格を変えてプレーしていくしかない」と考え方を改めた昌子の決意がピッチで体現されていた。
【次ページ】主力として初めて掴んだタイトルにも満足せず