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Jリーグ 9年前

プレーで、声で、背中で牽引する小笠原満男。鹿島に17冠目もたらした主将、尽きることない勝利への欲

text by 青木務 photo by Dan Orlowitz

悔しい思いを越えて勝利を掴んできた

 昨季のリーグ最終節の後、カシマスタジアムの外で記者陣に囲まれた鈴木満常務取締役強化部長はこんなことを話していた。

「勝つ喜びも負けた時の悔しさも知っている選手は、知らない選手以上に強い。勝った時の喜びを知っているからまた勝ちたいという欲も出てくる。苦しい思いをしても、あれを味わえるんだったらと」

 小笠原も「こういう舞台で勝ってきたことばかりがフォーカスされますけど、決勝で負けたことも何回もある」と、悔しい記憶を勝利という結果で上書きしてきたからこそ今があると強調する。そして、鈴木氏と全く同じ言葉を口にした。

「勝った人にしかわからないこの感覚をまた味わいたいという思いがあれば、どんどんタイトルを獲っていくチームになると思う」

 頂点だけを見つめて精進しているがゆえに、停滞を嫌う。J1の2ndステージ制覇は厳しくなっているが、「まだ何があるかわからない。しっかり勝って終わりたいし、可能性はあるので諦めず2勝して終わりたい」と、視線は“次”へと向けられている。

 ジーコスピリットと呼ばれる勝者のメンタリティが息づく鹿島で、その魂を継承してきた小笠原。この闘将の背中を見て若い選手たちは何を思うのか。柴崎は小笠原の隣で独り立ちの時を迎え、昌子も3番が板についてきた。カイオは決勝という独特な雰囲気が漂う舞台で軽やかに相手を翻弄し、赤崎秀平や鈴木優磨もタイトル奪還に貢献した。未来を担う選手は着実に出てきている。それでも、鹿島アントラーズというクラブの価値を最も理解し、ピッチ上で表現しているのは今も背番号40だ。

「まだまだ現役を続けて欲しい」と昌子は言った。もちろん、小笠原も退く気持ちはさらさらない。勝利への渇望が尽きない限り走り続けるはずで、その足を止めることは当分先になるだろう。

【了】

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