「タイトルを獲るのがこのチーム」
そうした中、後半に一挙3得点を奪った。小笠原はCKで2得点をお膳立てし、カイオのダメ押し弾の起点にもなった。ここぞという場面で仕事をやってのける姿は、鹿島らしさを体現していた。
もちろん、それだけではない。優勝会見で石井正忠監督は「こぼれ球への反応や挟み込みに行くタイミングなど、非常にやってくれていたなと思っています」と、キャプテンのパフォーマンスを称賛した。
プレッシャーのかかる大舞台で、最大限の力を発揮し仲間を牽引した。鋭い寄せでボールを狩り、手を叩きながら大声で味方を鼓舞した。何より説得力のあるプレーが周囲に与える影響力は計り知れない。「伊達にこういう試合いっぱいやってないので」とクールに話したが、小笠原の存在はチームの大きな拠り所となっていた。そして彼の体に染み付いた勝負強さは、鹿島にいたからこそ得られたものでもある。
「アントラーズというチームにいられたおかげで、こういう試合を何回もやってきた。それは日本代表のW杯予選もそうだし、W杯もそう。緊張なんかしている暇はない。この年齢になって冷静に試合を見られるようになっているのは、若い頃にはなかったもの」
今年で36歳となり、以前のようには動けなくなったのかもしれない。年齢を重ねることでできないことが増え、もどかしく過ごした日々もあったのかもしれない。だが、それと引き換えに得たものも間違いなくある。
しかも、勝利への意欲は低下するどころか年々強くなっている。常勝軍団のキャプテンには、栄冠を手にするたび新たな飢餓感が芽生える。今回の優勝で17冠目となったが、余韻に浸る時間はすぐに終わったようだ。
「これで満足しちゃいけない。優勝しても修正すべきところがあるというのを次に繋げて、またタイトルを獲るのがこのチーム」
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