“フィジテク”は山形の土台に。継続のために必要とされた石崎監督の手腕
迎えた今シーズン。J1の厚い壁に苦しめられながらも、石崎監督のもとで描かれたベクトルはぶれなかった。開幕へ向けての補強は、石崎監督と石井テクニカルダイレクターの間で「守備のベースをもうワンランク高める」で一致した。
描かれた設計図に沿ってベガルタ仙台からセンターバックの渡辺広大を、相手へにらみをきかせられる鬼軍曹のようなボランチとしてブラジルからアルセウを獲得した。資金的な問題から大型補強はできなかったが、山岸と川西を完全移籍に切り替えることでセンターラインを安定させた。
特に川西に完全移籍を決意させた理由は、石崎監督の指導を抜きには語れない。実際、サッカー界にはいまも石崎監督を慕う教え子が多い。たとえば、中央大学から加入した2003年シーズンにフィジテクを経験している中村憲剛(川崎フロンターレ)は、いまも感謝の思いを忘れていない。
「練習はきつかったけど、あの1年が僕の土台になっている」
言うまでもなく、今シーズンもリーグ戦と同時進行で指名練習やフィジテクが課されてきた。選手の体内に確実に蓄積された「たくましさ」は、山形スタイルを完成させていく上で重要な役割を果たすだろう。
1999年シーズンに初めてJ2に参入してから17年目。試行錯誤を繰り返しながらようやく確固たる土台が築かれ、それに見合う家を建てる段階に到達したからこそ、さらなる継続を重視する意味でも石崎監督の手腕が必要とされたわけだ。
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