埋められないテベスの穴
ここで真っ先に頭に浮かぶのが、当然ながらテベスの不在だ。ユーベの2年間で計50ゴールという得点力を誇った彼は、相手の守備が堅いときでも単独で突破し、シュートをねじ込んでくれる頼れるストライカーだった。
その退団にあたり経験豊富なマリオ・マンジュキッチにイタリア代表のシモーネ・ザザ、そして3200万ユーロの値が付いたパウロ・ディバラらを一気に補強しながらこの体たらくでは、単純にテベスの得点力を誰もカバーできていないからだという言い方も出来る。
しかし事情は、もう少し複雑である。テベスの穴は、戦術面で大きく堪えているのだ。アントニオ・コンテからバトンを引き継ぐにあたり、マッシミリアーノ・アレグリ監督は速攻型のチームに細かいショートパスでの組み立てという色をつけたが、テベスは前線でのつなぎ役としても機能した。
中盤を助けてショートパスを散らしたり、密集地でパスを通したり、あるいはドリブルでこじ開けたりといったチャンスメイクが、攻撃面での重要なアクセントとなっていた。
このタスクを、現状では誰も補えていないのだ。マンジュキッチの仕事はエリア内に限定され、前線で体が張れてスピードのあるザザにもテベスの繊細な技術は望めない。
ディバラには高い技術があるが、一方で線が細くて相手の当たりに苦労している。前所属のパレルモではゴール前の仕事に集中させて伸びた選手なので、使い方が間違っているとも言えるが…。