クラブ全体に浸透するチームへのあふれる愛情
その過程ではユニフォームの胸の部分を含めて、スポンサーがない状態で戦ったシーズンもある。だからこそ、自戒の意味を込めて眞壁会長は未来を見すえる。
「経営をよくするためにフットボールをやってきたんじゃない。ウチの選手たちがさらに成長するためにいままでやってきた。今日のようなプレーや、勝利への対価となるようなクラブにするためには何をするべきなのか、ということが僕をはじめとする経営陣に強く問われている。
市民クラブと言えばカッコいい響きだけど、簡単に言うと無責任経営。いまさら大企業がつくようなチームは出てこないわけであって、そのなかで日本のサッカー全体をどうやって強くしていけばいいのかということを真剣に考えないといけない」
2シーズン連続でJ1に挑む2016年への戦いは、すでに始まっている。さらにスポンサーを募り、予算を含めてクラブとしての体力をつけて、強豪と呼ばれるクラブをもっと、もっと下から突き上げる存在になる。J1における下剋上を果たせたときにこそ、日本サッカー界全体のレベルが上がると信じながら。
FC東京戦後に、古林と菊池はくしくも同じニュアンスの言葉を残している。
「ずっとお世話になってきて、昇格や降格を繰り返してきて、やっと本当に自分たちの手で2年続けてJ1で戦える切符を得た。
その勝利に貢献できたことはすごく嬉しいし、少しでも恩返しというか、そういうものにつながったのかなと」
感謝したいのは、むしろ眞壁会長をはじめとする経営陣のほうだったはずだ。取材エリアではからずもほおを伝った涙には、魂を震わせるプレーで悲願を成就させたチームへのあふれんばかりの愛情と、ぶれないベクトルのもとでベルマーレが走り続ける未来に対する責任感が凝縮されていた。(文中一部敬称略)
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