指導者は裏付けある知識を持ち個々に合ったアドバイスを送る
もう1つ興味深いポイントがある。それは『GKとの駆け引き』だ。教授はこれを『シュート戦術』といい、サンフレッチェ広島のFW佐藤寿人選手を実例に挙げた。
同選手は7月末にJで12年連続2ケタ得点を記録。プロサッカー選手の中では身長も低く、スピードがあるわけではない。その中でも第一線で得点を奪い続けられているのは、シュート戦術が優れている証だという。GKとDFとの駆け引きでフリーになるスキル、一瞬のスキを見つける能力、GKの体勢を見抜いて重心や動き出しのタイミングを外す洞察力など日本人FWが参考にできる点は多い。
ここで富岡教授が指摘したのはジュニア世代の指導者によるオーバーコーチングだ。
「東京経済大学のサッカー部で指導をはじめて30年以上経ちます。今の選手たちはパスをつなぎ、周囲と連動してサッカーをします。ボールテクニックにも優れ、いい判断もできています。しかし、それは自分たちが主導権を握っている場合に限ります。対戦相手が優位に立っている場合、状況を打開したり、試合の流れを変えたりすることができないことに問題を抱えています。きっとジュニア世代から『なぜ?』を問いかけられず、指導者にある程度の答えを示されていたのが原因だと思います」
確かに日本人の指導者はキックを教えるときも足首を固定してつま先まで伸ばすなど『型』にはめすぎている。子どもたち一人一人によって体型や体の柔軟性などが違うのに…。教授はこう続けてくれた。
「たとえば、毎回の練習で15分ほどの時間を子どもたちに与えてはいかがでしょうか。練習メニューを考えさせ、自分たちですべて取り組ませるのです。そうすれば必然的に『なぜ』そのメニューを考案し、練習したのかを考えざるを得ません。継続すれば、試合の中で起こる『公式外』の状況を個々で打開できるようになるはずです」