決勝点を演出したキャプテン永木が見せた笑顔
ニアサイドにはFWキリノ、菊池の後方に古林がいただけではない。菊池のすぐ左側には3バックの左を務める三竿雄斗が、長い距離を走って詰めてきていた。
こぼれ球に反応すべく、高山、ボランチの菊地俊介、そして永木もペナルティーエリア内もしくはすぐ外側にポジションを取っている。相手ゴール前にいたベルマーレの選手は、実に8人を数えた。
いまこそリスクを冒すときだ。選手たちの阿吽の呼吸が、FC東京守備陣を棒立ちにさせるゴールを生んだ。スイッチを入れたのは、ここでも永木だった。
直前のシーンで、永木はセンターサークル付近でMF中島翔哉と激しく接触。相手の手が入った顔面を押さえながら、ピッチに倒れ込んだ。実はこのとき、右目のコンタクトレンズが衝撃で外れかけていた。
「でも、何だかんだしている間に目の前に米本選手がいて、ゴチャゴチャやっていたので、これは奪えるかなと思って戻ったんですけど」
コンタクトレンズを入れ直すこともなく、5秒後には立ち上がる。ぼやける視界のなかに、プレッシャーをかわそうと小刻みに旋回しているMF米本拓司が飛び込んでくる。
死角から飛び込み、激しいボディコンタクトでボールを奪取。そのままドリブルでもち上がり、右側をフォローしてきた高山にボールを預けた。永木の頼れる背中に連動するように、菊地、三竿、藤田、菊地がどんどん前へ進んでいく。
自陣に残っていたフィールドプレーヤーは遠藤航、島村毅の両DFだけ。FC東京が狙うカウンターを警戒しながら数少ないチャンスの匂いをかぎ取り、手にした白星に永木が笑顔を弾ませた。
「このチームにいてよかった。自分は今年で5年目ですけど、徐々に、本当に徐々に、J2に落ちて悔しい思いをしながら、そのなかでも右肩上がりで成長できていると感じられるので」
2年前の11月23日。後半アディショナルタイムの失点で1-2の逆転負けを喫し、J2降格が決まった場所がくしくも味の素スタジアムであり、相手も同じFC東京だった。
「胸を張ってスタジアムを後にしてほしい。お前たちの監督をやっていることを本当に誇りに思う」