順風満帆ではなかった残留への軌跡
あれから約7ヶ月。2戦2敗と一度も勝利したことのない味の素スタジアムのピッチで、さらにたくましさを増した選手たちがベルマーレの原点を激しく、雄々しく実践している。
年間順位で上位を争うFC東京に対して一歩も引かない姿が、曹監督の心を震わせた。
「我々の選手は100%出さないと、練習でも生き残っていけない。偉そうに言いますけど、99%でできる選手がこの日本にいるかもしれない。でも我々は100%、110%、もしくは120%を出さないとJ1でプレーする権利を得られないんだよと。
決して追い込まれた感情ではなく、むしろそれを楽しんでいこうと。サッカーをすることに喜びを感じて、失敗してもいいから常に100%の姿勢で勝負に、もしくは練習に取り組もうとずっと言ってきましたが、今日はそのままの試合になったと思います」
残留を決めた時点で11勝9分11敗。決して順風満帆な軌跡ではなかった。黒星のなかには、ベルマーレを崩壊の瀬戸際に追い込んだ惨敗もある。
敵地で4月25日に行われた横浜F・マリノス戦。0対3で完敗を喫した直後に、ゴール裏のサポーターから今シーズンで初めてブーイングを浴びせられた。
FC東京、ガンバ大阪、そしてマリノスと、永木の言葉を借りれば「J1のメガクラブ」に喫した3連敗。特にマリノス戦は攻守ともに戦い方を見失い、精彩を欠いたまま失点を重ねた。
伏線は曹監督の言葉にあった。FC東京とガンバはともに、周到な対策を講じてベルマーレを餌食にした。ベルマーレに体力がある前半は巧みにいなし、隙をついて先制点を奪い、あえて前がかりに攻めさせて逆にカウンターを仕掛ける。
ベルマーレ戦で先制ゴールを奪ったガンバのFW宇佐美貴史は、試合後にこう語っていたほどだ。
「湘南は人数をかけてショートカウンターを攻め込んでくるので、そこでボールを奪い返せばスペースがたくさんあるということ」