帰化選手待望論に反して進む“純血主義”
但し、現在招集されている越僑選手も、代表で確固たるポジションを確立できているわけではない。歴代の代表監督らは、越僑選手のレベルをベトナム生まれの選手と大差ないと判断し、積極的に招集してこなかった。外国育ちのため、文化的・習慣的に馴染めないという問題もある。
リーグで抜群の実績を誇るサムソンにしても、代表チームに貢献できるかは未知数だ。しかし、ベトナム人を対象とした年間最優秀選手賞(ゴールデンボール)にノミネートされる権利を持ちながら、代表候補にはかすりもしないという現在の状況は、やはり公平性に欠くように思える。
因みに、三浦監督は、この問題について地元記者に質問された際、「世界では、多くの帰化選手が代表チームで活躍しています。その国で長い年月を暮らし、帰化手続きを行った選手が代表に呼ばれるのは、何も不自然なことではありません」と述べている。
W杯アジア2次予選で苦戦するベトナムだが、VFFが実際に目指すところは、世界の頂を決するW杯の舞台ではなく、AFCアジアカップ2019の出場権獲得だろう。残念ながら、それが今のベトナムの実力に見合った目標だ。
ベトナムは現在、東南アジア王者に返り咲くべく努力を続けている。若手育成に注力するベトナムは、今季から国内リーグの外国人枠を3人から2人に削減(※2部以下は外国人選手の登録禁止)し、自国の若手に出場機会を与える方法を選択。
帰化選手の代表招集を固辞する姿勢も結局は、「自国の若い力を育て、民族の力で勝つ」というベトナム的な思想に基づくものだ。この方法には、メリットもデメリットもあるが、今はまだ種をまいている段階だ。その結果が出るのは、まだ何年かを要するだろう。
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