「すぐにカラータイマーが鳴ってしまうという意味を込めてのウルトラマン」
新天地・松本山雅FCの一員になってから間もないころに、MF前田直輝は反町康治監督からこんなニックネームをつけられている。
「ウルトラマン」
平成6年生まれの前田にとっては、昭和の高度成長期に大ヒットした「ウルトラマン」に込められた意味がおそらくわからなかったはずだ。
苦笑いしながら、反町監督が理由を説明してくれたことがある。
「試合の流れから消えている時間が多いから、すぐにカラータイマーが鳴ってしまうという意味を込めて、ウルトラマンと言ったんだよね」
もっとも、自らラブコールを送り、東京ヴェルディで3シーズン目を迎えようとしていた20歳の前田を期限付き移籍でチームに迎え入れたのも反町監督だった。
ヴェルディの育成組織で小学校4年生のときから磨かれてきた、繊細かつ大胆なボールタッチ。右タッチライン際から高速ドリブルでカットインして、強烈なミドルシュートを放つ利き足の左足は相手を畏怖させる潜在能力を秘めている。
前田は昨シーズン、19歳にして副キャプテンを務めていた。ヴェルディがかける期待の大きさが伝わってくるが、一方で自分自身を客観的に見つめてもいた。
「自分を変えたい」
だからこそ、松本から届いたオファーに移籍を即決する。J2の舞台で対戦してきた松本の一員になれば、抱える課題を必ず解消できると信じたからだ。
「このチームはスプリントの量が多いし、球際の強さというものもある。自分に一番足りないものであり、そこを強くしたいと思ったので」