乾は“違い”を生み出せる存在となるか
このように技術はなくとも、気持ちで勝負しているチームの中で乾貴士は異なるクオリティを示しているといえるだろう。
この日、左ウイングとして4試合連続先発を果たした乾は、90分フル出場でチームトップのパス成功率82%を記録。3回の1対1を仕掛けて3本のクロスを上げるなど、攻撃面で奮闘した。このエイバルにおいて、乾はよりラテン系の選手に近い存在となっている。
しかし、先発も4試合となれば対戦相手も乾について理解し始めるだろう。セビージャは、これまでの相手以上に乾に対して厳しいプレスを仕掛けて自由を奪っていた。
バルサやマドリーの前線はもちろん、アトレティコもセルタもビジャレアルも強力な前線を擁するスペイン。2クラブが図抜け過ぎているため“2強リーグ”と揶揄されるが、セビージャがELを制しているように実際のリーグレベルはイングランドよりもドイツよりも高いといっても過言ではない。
そして、強力なアタッカーは優秀なディフェンダーを育てる。それだけに、乾は今後より厳しい守備の壁に阻まれることになるだろう。
ただ、明らかに守備ができない選手ながら4試合連続で先発に据えられていることからもこのチームにおいて乾に求められていることは守備での貢献ではなく“違い”を生み出すことのはず。
大久保嘉人や中村俊輔でさえもクリアできなかったスペインの壁を乾が超えることはできるのか。次の舞台はバルセロナのホーム、カンプ・ノウだ。
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